北鴎碑林は、金子鴎亭先生生誕100年記念事業の一環として、金子鴎亭先生石碑13基をはじめ門人の石碑が、金子鴎亭先生の故郷北海道松前町の松前公園内に建立された石碑群です。
第一次 平成20年10月12日竣工 84基
第二次 平成25年10月06日竣工 36基
 
金子鴎亭先生石碑13基と拓本 第一次門人の石碑71基と拓本(一)
第一次門人の石碑71基と拓本(二)
第一次門人の石碑71基と拓本(三)
第一次門人の石碑71基と拓本(四)
第一次門人の石碑71基と拓本(五)

第二次門人の石碑36基と拓本(一)
第二次門人の石碑36基と拓本(二)
第二次門人の石碑36基と拓本(三)

石に書を刻む
 北鴎碑林の石碑は全て中国で製作し日本に輸入、現地の土木会社にて設置した。設置には北海道松前町の気候風土に合った基礎工事をした。

 通常の石碑は、書かれた文字の外形を彫り、文字の底部は丸く「U字」形になっているものが多い。 しかし、書の作品を石に彫る場合、筆意やカスレ・滲みをどこまで表現出来るかが大きな課題となる。西安碑林の石碑等から書作品の石刻には薬研彫りが最適であると判断した。

 現代の日本では機械彫りが主で手彫り職人が少なく、特に薬研彫りの手彫り職人は皆無の様である。又、日本国内では、機械彫りでも石材代や台石、彫刻代等を含めて高額となる。もし薬研彫りの手彫り職人が居たとしても機械彫り以上の費用が必要なのは明白である。そこで、中国国内を調査し今回の石刻師と出会った。石刻師には、現代日本の書芸術について根気よく説明した結果、絵画と同じと理解を頂き石碑制作を受けて頂く事が出来た。日本国内での製作に比べ、かなり安価な費用で完成させる事が出来た。

 薬研彫りの底部は「V字」形になっている。このV字の尖った先端が筆の穂先が通った位置である。又、紙作品で表現されているカスレや滲みを石彫に100%表現する事は不可能である。それ故、石刻師に渡す紙原稿には筆文字線の上から白鉛筆で骨線を入れ、尚且つ、各文字の隣には注釈用として文字の筆順と次の文字への繋がりをボールペンで補筆した。現在の中国は旧漢字から簡体漢字文字になっている事と日本語のひらがなを全く知らない為、とくに骨線と筆順に注意した。又、カスレには必要なカスレと不要なカスレを見極め、必要なカスレを強調し、不要なカスレを削除した。滲みは表現出来る範囲で生かす事にした。

 84基分の原稿を石刻師に渡してから日本に輸入するまでの約2年半で、4回訪中し、薬研彫り文字の確認、補筆、修正、等々を行った。